家紋でも商標登録はできるのか?
水戸徳川家の家紋によく似た商標が、イベント会社によって登録されたとして、水戸徳川家15代当主が理事長を務める公益財団法人が、特許庁に対して異議申立を行ったことがニュースになっています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161104/k10010755161000.html
そもそも家紋が果たして商標登録の対象になるのでしょうか。
現状多くの国民がそれぞれの家柄の家紋を持っていて、それを皆で共有して使っているものであるという一般国民の認識をベースにするならば、これを商標登録の対象として一私人・一企業に使用を独占させるべきでないという議論も確かにありえます。
しかし、現時点で家紋の商標登録を制限できる法的根拠は、商標法全体を見渡しても容易に見当たらないように思われます。たとえば、今回問題となっている葵のご紋の図形ですら、既に住友化学株式会社が第1類(化学品など)の分類(カテゴリー)で平成9年に登録を果たしています(登録番号第3352240号)。
今回の異議申立審判においては水戸徳川家の財団側が「需要者が何人かの業に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」(商標法3条1項6号)、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」(商標法4条1項7号)、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」(商標法4条1項15号)、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」(同16号)などの主張がなされている可能性がありますが、いずれもあまり主張としてピンとこない印象を受けます。それだからこそ前述のとおり葵のご紋の図形の登録例も既に複数あるのでしょう。
いずれにしても特許庁の今回の異議申立てに対する判断が大変注目されます。
なお、菊のご紋(皇室の家紋)や桐のご紋(政府の紋章)は当然商標登録できません。このほかにも著名な標章の商標出願には多くの制約があるため、出願を検討される際は事前に弊事務所によくご相談頂くことをお勧めいたします。