退職した従業員が自社製品と類似したソフトウェアを開発・販売している?
ソフトウェアを開発・販売している企業様からは、退職した従業員が自社製品と類似した製品を開発・販売しているのではないか?というご相談を承ることもあります。このような場合、プログラムは著作権法上の著作物にあたるため、著作権法の複製もしくは翻案にあたるのではないかとして著作権法違反の有無が問題となります。今回はそうした場合にプログラムの著作物の複製・翻案にあたるかどうかの判断基準についてのお話です。
(プログラムの)著作権侵害の基準とは?
プロクラム含め、ある著作物が他人の著作物の著作権を侵害しているといえるためには、(1)他人の著作物に依拠していること(依拠性。他人の著作物のいわゆる「パクり」であること)、及び(2)他人の著作物との類似性の2つの要件を満たす必要があります。このうち、(2)の類似性が高いことの立証にさえ成功すれば、(1)の依拠性の立証にも半分自動的に成功してしまうケースが少なくありません。
ではこの類似性の判断基準としてはいったいどのようなものがあるのでしょうか。これまでの判例を参考に以下挙げてみたいと思います。
ソースコードが一致・類似する割合が多いか少ないか
他人の著作物とソースコードが一致・類似する割合があまりに高いと、著作物間の類似性が高く、さらには依拠性が認められるという判断に傾きがちです。
開発過程でソースコードが一致・類似する部分を回避する余地はあるか
開発過程でソースコードが一致・類似する部分を回避する余地がない場合、誰がそのようなソフトウェアを開発しても同じようなソースコードにしかならないため、類似性の認定は厳格になり、その分だけ複製ないし翻案の該当の認定も厳しくなります。
プログラムの構造で一致・類似した部分があるか
プログラムの構造自体はアイデアそのものであり、著作権法ではアイデア自体が保護されることはありません(アイデア自体を保護するのは特許などですね)。
もっとも、プログラムの構造が似ていれば似ているほど、他人のプログラムとの類似性は高くなるわけで、その分だけ複製ないし翻案の該当の認定がなされやすいということになります。
なお、相手方に対するソースコードの開示請求手続については、弁護士法の弁護士照会手続や民事訴訟法の証拠保全手続きなどがあります。いわゆる「パクり」の可能性が高いソフトウェアに悩まされているIT企業様などは、是非一度専門の弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
以上