システム開発委託契約の損害賠償を限定する条項は常に有効か?
契約交渉のキモとなる『責任限定条項』
システム開発委託契約をめぐってユーザとベンダとの間で最も激しい交渉が戦わされる条項、それはベンダの損害賠償責任の範囲を委託料の範囲に限定する、などの責任限定条項です。
責任限定条項にはどのような内容のものがあるか
この責任限定条項ですが、先ほど挙げたように具体的に損害賠償金額による責任限定の方法もあれば、ベンダの行為から現実かつ直接に生じた損害は賠償するが逸失利益や間接損害は賠償に応じないといった、損害の種類による責任限定の方法もあります。
責任限定条項は常に有効か
この責任限定条項はトラブル発生の際にはユーザから損害賠償請求を受けることになりやすいベンダ側にとって心強いリスクヘッジになりますが、実は常に有効とは限りません。
この点に関し、東京高等裁判所平成25年9月26日の判決をご紹介しておきたいと思います。
この判決の事案は、多少簡略化すると、システム開発がベンダYの過失によって途中で頓挫してしまったため、ユーザXがベンダYに対して支払い済みのシステム開発委託代金の返還に加えて他のベンダZに対して支払ったシステム開発委託料相当額の損害賠償も請求したというものです。ユーザXとベンダYとの間ではシステム開発委託契約書が取り交わされており、この中でベンダYの責任を「契約の代金相当額」に限定する旨の記載(責任限定条項)があったことからこの責任限定条項が本件で有効かどうかが問題となりました。
判決は、この責任限定条項を制限的に解釈し、ユーザXがベンダZに支払ったシステム開発委託代金についてもベンダYは損害賠償責任を負うとしました。判決は責任限定条項が無敵のものではないということを認めたのです。
もっとも、本判決のケースも、システム開発の性質上、ベンダYにとっても、ユーザXが他のベンダであるベンダZに対して同時にシステム開発を委託するであろうことが当然に認識・予見できたケースだったという特殊な事情もあったため、直ちに一般化することは難しいと思われます。
なるべく自社に有利な責任限定条項をシステム開発委託契約書に盛り込みたい、あるいは自社に不利な責任限定条項が盛り込まれるのをできる限り回避したいという方々がいらっしゃいましたら、お気軽に弊事務所までご相談ください。