不貞行為が原因で生じた治療費や休業損害。不貞配偶者や不貞相手に対して請求できる?
夫婦の不貞行為に基づく損害賠償請求事件に関してよくお受けするご相談が、被害者たる配偶者が不貞配偶者の不貞行為によって精神的ショックやストレスを受け、うつ病などを発症したことによってご自身に休業が発生した場合、果たしてうつ病の治療費や休業損害を不貞配偶者や不貞相手に対して請求できるのか?というものです。
この点、判例は治療費や休業損害の損害賠償を認めたものも確かに存在するものの、ほとんどはこれらを別個の損害項目として認めることなく、通常の慰謝料請求における慰謝料額の中に治療費や休業損害が生じているという事情を織り込んで慰謝料額を算定するという方法を採ることの方が多いようです。
弊事務所が携わった不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟において治療費や休業損害を請求した場合も、慰謝料額を算定するにあたってそのような事実を考慮するものの、別個の損害項目としては認めてもらえないことがほとんどでした。
このように不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟において治療費や休業損害の損害賠償が別個の損害項目として認められない理由として、診断書や休業の証拠を裁判所に提出してみても裁判所はなかなか不貞行為と被害者とのうつ病発症(ないし休業)との間に因果関係があると認めづらい(他の原因も働いているのでは?との考えに至りやすい)という事情がありそうです。
もちろん、慰謝料額の算定に当たってこうした治療費や休業損害が発生している事情を主張する意味自体はありますので、このような損害が発生しているという方はご相談の際に是非事情についてお教えいただければと思います。