【「訴状が被告に届かない!」‐訴状の不送達の問題について】(第2回/全2回)
不動産関係事件などでは、民事訴訟を提起して被告に訴状を送達しようにも被告が不在であったり訴状を受け取らなかったりして被告に訴状が届かないことが少なからずあります。今回のコラムではそのような問題に対する実務上の対応方法について解説いたします。今回は全2回のうち2回目です。
付郵便送達とは
付郵便送達とは、書留郵便で名宛人に訴状を発送し、発送した時点を以てその送達が完了したとみなす方式です。この方法によれば、名宛人が実際に訴状を受け取るか受け取らないかにかかわらず、訴状の発送を以て送達が完了するということになります。
付郵便送達の方式を裁判所に採用してもらうためには、送達先に名宛人が実際に所在(居住)していることを調査して報告書として裁判所に報告、さらに付郵便送達の方法によることを裁判所に上申する必要があります。
この調査の内容としては、表札の有無、電気メーターやガスメーターの状況確認、郵便物の状況の確認、呼び鈴に対する応答の有無のほか、近隣住人などの関係者に対する聞き込み調査があります。
これらの調査の結果、(たとえば、メーターがよく動いている、郵便物や洗濯物が取り込まれているなど)名宛人がそこに所在していると裁判所が判断できれば、付郵便送達の方式が採用されることになります。
一方、こうした調査の結果名宛人がそこに所在しているか裁判所も判断がつかないとなれば、最後の手段として公示送達の方式が選択されます。
公示送達とは
公示送達は、住民票(名宛人が法人の場合は法人登記簿)等記載の住所に名宛人が所在しておらず、名宛人の所在場所が不明である場合に選択される送達方式です。具体的には、裁判所書記官が名宛人に対する送達物を保管しつつ、名宛人が出頭すればいつでも書類を交付する旨の書面を裁判所に設置されている掲示板に掲示し、当該掲示から2週間経過したときに送達が完了したものとみなして送達の効力を生じさせるものです。
裁判所の敷地入口近くに掲示板があり、その中に多数の貼り紙がされているのをご覧になった記憶のある方もいらっしゃるかもしれませんが、それらの書類の相当部分がこの公示送達手続に付された事件における公示送達の告知文書ということになります。
この公示送達は、前出の付郵便送達とは異なり、名宛人の実際の所在地に郵便で送達がなされることはなく、名宛人が送達の事実を了知できる可能性が事実上低いという理由から、送達方式としては最後の手段として用いられるものです。
公示送達のための調査の結果、名宛人が送達しようとしていた場所に所在していないと裁判所が判断できれば、公示送達の方式が採用されることになります。