マンション管理組合法人の理事改選に伴う重任登記を怠った理事が過料処分に
熊本市内のマンションで、管理組合法人の理事改選に伴う重任登記をしなかった2人と、この2人のうち総会で議長を務めたにも関わらず総会議事録を署名人が不足した状態で作成したとして1人に、熊本地裁が昨年5月、区分所有法第71条の過料処分を科していたことがわかりました。マンションの区分所有者が違反を裁判所に通知したということです。このマンションは築38年、店舗含め11戸ということです。
前提事項として確認しておきますと、区分所有法は第71条で総会議事録の未作成や管理組合法人の役員改任(重任を含む)の登記を怠ること(ちなみに登記の期限は役員の変更から2週間以内です)について、その行為を行った者(総会議事録については議長、役員改任については理事)を20万円以下の過料に処すると規定しています(ちなみに「過料」は行政上の秩序罰であり、刑事罰の一種である「科料」とは区別されます。我々弁護士は「あやまちりょう」「とがりょう」と呼んで両者を区別したりします。)
今回熊本地裁は、区分所有者からの通知(申立て)に応じ、この議長と理事に対して合計8万円の過料を言い渡しました(未登記と議事録署名人違反の1人が5万円、未登記の1人が3万円)。区分所有者はその他の理事3人についても未登記の理由で熊本地裁に通知していましたが、地裁は「過失の度合いが低いため処分しない」としてこの3人については過料を通知しなかったということです。
この過料処分の後、管理組合法人は臨時総会を開催して過料を管理組合法人が負担する旨を総会決議しました。また、その後、同マンションの管理会社が管理組合法人に対する業務支援が十分でなかったことを認め、過料相当額の管理費を減額して実質的に過料を自ら負担したということです。
管理組合では総会議事録は前述のように法律上作成が義務付けられているにもかかわらず、実務上は惰性だったり役員間の意見の対立で議事録の内容がまとまらない、あるいは署名人を確保できないなどの原因で議事録作成が未了になっているケースが少なからず見られます。また、やはり惰性で管理組合法人の改選(特に重任の)登記が未了になっているケースもちらほらと見受けられます。
このような場合、ご覧のとおり区分所有者の方によっては過料の通知を裁判所に行うケースがありますので、注意が必要です。弊事務所でも管理会社の担当者様などにはこのような事態が起きないよう日頃からアドバイスさせて頂いておりますが、区分所有者の方の方からこういったケースでの対応方法についてご相談に見えられるケースもあります。
マンション管理でお困りの管理組合役員様、管理会社様、区分所有者様がいらっしゃいましたら、弊事務所までお気軽にご相談ください。
参考:マンション管理新聞1265号