建物明渡しの強制執行
賃借人が建物明渡し命令の判決に従わない!さてどうする?
建物賃貸借契約が終了、解約ないし解除された後に賃借人が建物から退去しようとしない場合、賃貸人としては賃借人に対して建物明渡し請求訴訟を提起することになりますが、当該訴訟によって賃借人に対し明渡しを命じる判決が下されたにもかかわらず、賃借人がなおも建物から退去せず明け渡さない場合には、建物明渡しの強制執行の申立を地方裁判所に対して行うことになります(民事執行法168条1項)。
強制執行
建物明渡しの強制執行の申立て
賃借人に対して建物を明け渡すよう命じる判決が下されたにもかかわらず、なおも賃借人が明け渡さない場合、賃貸人は、この判決の存在を法的根拠(これを「債務名義」といいます)として、執行官に対し、建物明渡しの強制執行を申し立てることになります(民事執行法168条)。
建物明渡しの催告
執行官は、建物明渡しの強制執行の申立があった日から原則2週間以内に現場の建物へ赴き、賃借人に対して、約1か月後の執行断行日までに建物を明け渡すよう催告します。
一方、賃貸人は、建物明渡しの断行に向けて準備を行う必要があります。すなわち、建物明渡しの断行時に賃借人が不在であるなどの事態に備えて、合鍵を用意したり、解錠業者を手配するなどする必要があります。また、後日の断行の際には建物から荷物を搬出、運搬するためのトラックや作業員が必要となることがありますので、どの程度の準備をする必要があるか、建物明渡し催告の際に執行官とも協議し確認します。
建物明渡しの断行
賃借人が明渡しの断行日までに建物を任意に明け渡さない場合、執行官が現場の建物へ赴き、建物内の動産類の搬出を行って建物を空家にし、賃貸人に引渡します。
ただし、明渡し作業のために必要な開錠業者、引越し作業員、ダンボール箱、トラック、残置された動産類の保管場所(トランクルーム等)は賃貸人側で準備する必要があります。
建物内部に残置されている動産類については、執行官は、明渡しの断行実施日に即日売却する、あるいは一旦倉庫等に保管のうえ後日売却するなどの方法により処理します。
賃貸人は、期間の定めのある契約については期間満了前の1年前から6ヶ月前までの間に更新拒絶通知をすることで契約を終了することができるとされています(26条)。また、期間の定めのない契約については6ヶ月前の解約申し入れ(27条)により契約を終了させることができるとされています。
もっとも、いずれの場合においても、有効に契約を終了させるためには、正当事由が必要とされています(28条)。建物賃貸借における借主保護の要請から設けられた規定です。
合意更新の場合、期間を定めればそれによりますが、期間を定めなかった場合には期間の定めのない契約となります。
建物明渡しの強制執行に要する費用
建物明渡しの強制執行については、通常の引っ越しなどとはその内容も大きく異なるため、建物明渡しの強制執行の現場に精通した業者にご依頼されることをおすすめします。一般的には執行官に支払う費用と業者に支払う費用を合わせて10万円程度は要するのが一般的ですが、もちろんこれは建物明渡しの強制執行を行う現場の状況によって上下します。
それに加え、動産の撤去作業については作業員、ダンボール箱、トラック、動産類の保管場所(トランクルーム等)の準備の費用が必要となります。もちろん建物内部に存する動産類の数量により上下しますが、マンション1戸程度であればこの費用に50万円程度は要するものと見込まれます。具体的には、明渡し催告の際に引っ越し業者に荷物の数量を確認してもらい、見積もりを出してもらうことになります。
建物明渡しの強制執行の現場では、開錠業者、引っ越し業者、警備員、(特殊)清掃業者などの各種業者を活用する場面が出てきます。こうした業者に心当たりのない方につきましては、当事務所がご紹介することが可能です。
以上