あの有名商標が無効になる?

 液晶IGZOの商標「無効」、シャープ側敗訴 知財高裁

シャープの液晶ディスプレー「IGZO」の登録商標を無効とした特許庁の審決を不服として、同社が取り消しを求めた訴訟で、知的財産高裁(設楽隆一裁判長)は25日、請求を棄却する判決を言い渡した。

シャープ側は「IGZOの技術で商品を量産、販売しているのは当社だけで、宣伝・販促活動の結果、イメージが定着した。当社の商標と認められることは合理的な理由がある」と主張。IGZOの特許を保有する科学技術振興機構は訴えを棄却するよう求めていた。

シャープは同機構から利用許諾を受け、IGZOの技術を使って液晶ディスプレーなどの商品を製造販売。ブランドとしても利用し、201111月に商標登録した。

一方、IGZOはインジウムやガリウムなどからなる物質名で、同機構は13年7月、「商品の原材料を表示するのみの商標の登録は認められない」との商標法の規定を根拠に特許庁に審判を申し立て、同庁が14年3月、商標を無効とする審決を出した。

(日本経済新聞平成27225日電子版より抜粋)

 「IGZO」といえばあの「シャープ」の液晶テレビやスマホで使われている最新の液晶ブランドを示す商標として、もう一般にはかなり知れ渡っていますね。

ところがこのたび「独立行政法人科学技術振興機構」から「待った」がかかり、なんと知的財産高等裁判所の判決で「IGZO」商標は無効であるとの判断が下りました。

 どうも平成21年に「独立行政法人科学技術振興機構」が最新液晶の製造方法を出願して特許を取得していたようなのですが、この特許の要約をかいつまんで見てみます。

 (57)【要約】

【課題】a-IGZOをチャネル層として用いるTFTの素子特性分布に優れ、長時間動作の閾値電圧シフト量を低減した薄膜トランジスタの製造方法の提供。

【解決手段】In-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物半導体膜をチャネル層として用いた薄膜トランジスタの製造方法において(略)

 「In-Ga-Zn-O系アモルファス酸化物半導体膜」という小難しい原材料の略称として「IGZO」という言葉を使っているのがわかります。すなわち、科学技術振興機構は「IGZO」はただの液晶の原材料の名前なのだから、こんなものをシャープのような一企業に独占させるわけにはいかない!と「IGZO」商標の無効を主張し、シャープを相手に特許庁に審判を申し立てたわけです。

 なお、商標名に原材料の名前を使うだけでは商標登録ができないということに法律上なっています(商標法3条1項3号)。商品のパッケージやパンフレットで原材料の名前を使うことが一企業に独占されてしまっては、競合企業にはたまったものではありませんよね。

 このまま判決が確定しますとシャープの「IGZO」商標は無効となり商標出願時に遡って登録されていなかったことになりますので、「IGZO」商標の付いた商品の回収や新しい商標の開発費用だけでなく最新液晶のブランド低下など、ただでさえ赤字に転落してしまったシャープの経営にさまざまな重石となることが懸念されます。商標のマネジメントの重要性を改めて感じますね。

以上

コラム:企業法務

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