民事訴訟を起こされてしまったら

突然裁判所から郵便で『訴状』という書類を受け取り、民事訴訟を起こされてしまったら・・ここでは民事訴訟の被告になった場合の対応についてお話しさせて頂きます。

押さえておきたい民事訴訟の原則

「一度認めてしまった事実を後で後で争うことはできない」

訴状を読んでみると、それが法律的に意味のあるものかどうかはさておき、いくつかの反論が頭に思い浮かぶと思います。こういったものも含めて、被告となったあなたは訴状に対して「認否」を行わなければなりません。このとき、一度ある事実を認めてしまうと、後でそれを争うことはできないという民事訴訟の原則があるため、注意が必要です。

一度認めた事実を後で争うことを認めていては民事訴訟が先に進まず成り立ちませんから、当然といえば当然の原則ですが、民事訴訟に向き合うに当たっては極めて重要なことです。

「当事者による主張や立証は裁判期日に口頭で行うほか、書面で行うことが求められる」

民事訴訟における主張や認否は、原則として口頭ではなく書面でこれを行うことが求められます。口頭での主張は、あくまで書面での主張や立証を補うものである、との位置付けです。主張や立証が後で記録に残るようにするためには当然のことといえますが、こちらも重要なことです。

ご自身の主張や立証のポイントを簡潔に文書にまとめて、弁護士の事務所へご相談に赴かれ、場合によっては訴訟代理人を弁護士にご依頼されるとよいでしょう。

ただし、このような準備に思いのほか手間取ったり、訴状の入った封筒を気が重くてしばらく放置していたら、第一回期日が間近に迫っていて、それまでに弁護士の下へ相談に行く時間的余裕もない、という場合もあるでしょう。

そのような場合でも、答弁書だけは必ず第一回期日までに提出してください。

答弁書も出さずに第一回期日を欠席してしまうと欠席判決となり原告の請求通りの判決が出てしまう可能性すらありますが、答弁書さえ裁判所に提出しておけば、たとえ第一回期日に欠席しても第二回期日以降に訴訟手続きは持ち越されることになります(これを専門用語で「擬制陳述」といいます)。

また、訴状と一緒に裁判所から送られてくる呼出状には通常第一回期日の1週間前が答弁書の提出期限が記載してありますが、たとえ提出期限を経過したからといって、裁判所が答弁書を受け取らないということはありません。第一回口頭弁論の期日前であれば、提出期限後であっても臆することなく答弁書を裁判所へ提出するようにしてください。

なお、答弁書は裁判所分(正本)と原告分(副本)の合わせて2通を裁判所に提出するようにしてください。

訴状・答弁書の記載に関する注意事項

(1) 訴状の「訴訟費用は被告の負担とする」という記載について

訴状の請求の趣旨の項目のところに、
「訴訟費用は被告の負担とする」
という記載が多く見られますが、ここには弁護士費用(原告が原告の訴訟代理人弁護士へ支払った費用)は含まれませんので、この点はご安心ください。

ここでいう訴訟費用の負担とは「証人の日当・旅費、訴訟提起にかかる裁判所の手数料(印紙代)、鑑定費用」等の費用の負担を被告へ求めるというものです。通常は、印紙代が高額の場合や不動産鑑定費用などが多額にかかった場合等のケースを除いて、敗訴した側に現実的な負担をさせるまでには至らないことの方が多いといえ、あまり悩む必要のある請求事項ではないといえます(あくまで一般論です)。

(2) 答弁書の「請求の趣旨に対する答弁」の欄について

ここには、請求の趣旨を争うか争わないかを記載する欄がありますが、絶対に争わない旨の記載をしてはいけません。間違ってそうしてしまうと、これまた欠席判決と同様、即座に原告の主張通り、すなわち訴状通りの判決が出てしまいかねないのです。

(3) 答弁書の「請求の原因に記載の事実」について

ここでは、不用意に自らに不利な事実を認めてしまうことに注意しなければなりません。ご自身の記憶に反して、あるいはご自身の記憶があいまいであるのに安易に原告の主張に従うことのないようにしてください。間違ってそうしまうと、訴訟上「裁判上の自白」という取扱いにされてしまい、後で容易に撤回することができなくなってしまいます。

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