共同親権-親権者は離婚時に決めなければならないのか
これまでの民法では離婚時に親権者を決めることが必要だった
現行民法では、民法765条1項が「離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。」と規定している通り、離婚の届出に際し、父母の一方を親権者と定めない限り、離婚届の受理が認められませんでした。離婚届の親権欄を空白にしたままの離婚届の提出は認められなかったのです。
民法改正-一定の条件の下で親権者を決定しないまま離婚が可能に
しかし、父母の離婚意思を尊重するという趣旨のもと、改正民法765条1項は下記のように定めています。
「離婚の届出は、(中略)夫婦間に成年に達しない子がある場合には次の各号のいずれかに該当することを認めた後でなければ、受理することができない。
一 親権者の定めがされていること。
二 親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること。
この第2号に定めるように、今後離婚されるご夫婦は、親権者が事前に定められた場合(第1号)のほか「親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること」を証明すれば、離婚の届出が受理されることになります。
ではどのようにして「親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること」を証明すればよいでしょうか。具体的にはご夫婦の一方が申立てた親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立書(家庭裁判所の事件受理印を受けたもの)を離婚届に添えて証明することになると考えられます。
親権者指定の審判または調停申立ての取下げが制限されることに注意
これまで家事事件手続法によれば家事審判や家事調停は事件の終了までは申立人が自由に取下げることができるのが原則でした。
しかし、前述のような改正民法765条1項2号に基づいて離婚成立を先行させた後に親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立て取下げを自由に認めてしまうと、子の親権をご夫婦のどちら(あるいは両方)に帰属させるべきかについての判断が宙に浮いてしまい、「無親権児」が生じてしまう事態にもなりかねません。
ですので、改正家事事件手続法では親権者の指定の申立ての審判や調停は事件終了前でも家庭裁判所の許可を得ない限り取下げが認められないこととなりましたので、この点は注意が必要です。
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