親権の争いで知っておきたいいくつかのこと
お子さまの親権をめぐって離婚するご夫婦の間で争いが生じている場合、家庭裁判所は離婚成立時にご夫婦のうちどちらか一方を親権者として指定しなければなりませんが、家庭裁判所がお子さまの親権者を指定するに当たっては以下のような暗黙のルール(原則)が存在します。
1 母性優先の原則
お子さまがまだ子ども(特に乳幼児)の場合、母性優先の原則が働き、母親が親権者として優先されやすいとされています。これは、母親がお子さまに対して母性を発揮できることによるとされています。もっとも、あくまで「母性優先」であって「母親優先」ではありません。したがって、父親の方がお子さまに対してより母性を発揮していると判断されるケース、たとえば母親がお子さまに対して常習的にネグレクトを行ってきたようなケースでは、父親の方にもお子さまの親権が認められる可能性があるといえます。
一方、お子さまの年齢が上がり10歳くらいになってくると、お子さまにとって母性の必要性というものも薄れてゆくため、母性優先の原則はあまり優先される事情とはいえなくなってきます。
2 継続性の原則
裁判所はお子さまの監護環境の安定性と継続性を重視します。お子さまの年齢が上がってもこの原則は引き続き適用されやすいといえます。
3 きょうだい不分離の原則
兄弟姉妹は、なるべく揃って同じ親の親権下に置こうという原則です。この原則も比較的お子さまの年齢の影響を受けにくいといえます。
4 子の意思尊重の原則
お子さまが小学校も中学年くらいに入ってくると、裁判所もお子さまの意向を無視して一方的に親権者を指定するということは難しくなってきます。
以上の諸原則ですが、家庭裁判所はいずれかの原則のみで適切な親権者を判断するわけではありませんし、上記諸原則の間に優先順位が決まっているわけでもありません。家庭裁判所は上記諸原則をひとつずつ踏まえながら、適切な親権者が誰かを総合的に判断してゆくことになります。
以上