不貞行為の主張はどのようにして争われるか(1)
今回は、夫婦の一方(こちらが原告になります)が夫婦の他方もしくはその不貞相手(こちらが被告になります)を不貞行為で訴えた場合に、訴えられた相手方がどのようにその責任を争う場合があるか、検討してみたいと思います。
まず、そもそも不貞行為が存在しないとして争うことが考えられます(不貞行為の不存在)。不貞行為の存在について主張して立証する責任は原則として原告側にあるので、訴訟を提起する前の段階から原告側に十分な不貞行為に関する証拠がないと、原告は被告による不貞行為の存在を十分に主張立証できず、敗訴してしまうことになりかねません。不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟においては、まず原告となる方による十分な証拠集めが重要とされる理由です。
次に、確かに性的関係は持ったが、それについて故意や過失はなかったといって責任を否定することが考えられます(故意・過失の不存在)。ただし、一般的にはこの抗弁が訴訟で認められることはまれです。「既婚者と関係を持つことが悪いこととは知らなかった」という法律の錯誤の主張や「積極的に原告を加害する意思はなかった」という加害意思の不存在の主張は、訴訟ではまず通りません。例外的に、夫婦でありながら不貞行為を行った者が不貞相手に対して既婚者であることを意図的かつ用意周到に隠しており、不貞相手も不貞のパートナーが未婚者であると信じるのは無理もないというケースであれば、不貞行為はあったが過失はなかったとして不貞行為を行った者の責任が否定されるかもしれません。ただし、過失が否定されるハードルはかなり高いと考えておいた方がよいでしょう。既婚者と関係を持つということは、法的にはかくも高リスクな行為なのです。
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