子の親権・監護権について
親権・監護権とは
親権とは、親が子を養育・監護・教育する権利ということができます。いうまでもなく、親権は親の権利であるというだけでなく、子や社会に対する義務とワンセットのものです。親権は、子が成年すると当然に消滅します。
親権の中身は、1.(身上)監護権と2.財産管理権の2つに大別されます。
1.の(身上)監護権は、親が子を監護教育する権利であり、子の居所を指定する権利、子に対する懲戒権、職業許可権などを含みます。
2.の財産管理権は、子の財産に対する法定代理権を含みます。
1.の(身上)監護権と2.の財産管理権は、実務上はともかく、理論上はそれぞれ別人に分属させる(分け与える)ことができるとされています。
離婚時の子の親権者の判断基準について
離婚時に家庭裁判所が子の親権者を父母どちらに決定するかについては、実務上以下のような判断基準があるとされています。
- 母性優先の原則
- 兄弟姉妹不分離の原則
- 監護の継続性優位の原則
- 子は父母どちらへの親権帰属を希望しているか
- 父母の婚姻破綻についての有責性の程度
- 子の奪取の違法性の程度
- 面会交流実施への寛容性の程度
このうち、幼い子については1.母性優先の原則が働きやすく、一般論としては10歳程度までは他に特に優位な事情が認められない限り母が子の親権者と認められる可能性が高いといえます。もっとも、男女平等の観点などから昨今は3.監護の継続性優位の原則なども比重が増しているようであり、男親にも一定の監護の実績などがあれば家庭裁判所に主張する価値はありそうです。
監護権者と親権者との分属について
子の監護権者と親権者とを分ける形(分属)での解決はできないかとご相談にいらっしゃる方もいらっしゃいますが、実務上裁判所はこのような監護権者と親権者との分属に消極的です。ですが予めそのような形で解決する旨の合意がある程度夫婦間で事前に形成されているならば、調停手続で詳細な条件を詰めた上で、監護権者と親権者とを分属させることも可能でしょう。
親権者が子との面会交流を認めない場合に親権を取り上げることはできるか
親権を取得した親が月1回の子との面会交流の約束を守らず、非親権者の親が子に面会できないという場合、非親権者が親権者から親権を取り変えすこと(親権者の変更)は可能でしょうか?
この場合、残念ですが親権者が子の面会交流を認めないからといって直ちに非親権者への親権者変更が認められることはありません。まずは家庭裁判所経由での履行勧告、間接強制、再調停などの手段を通じて地道に面会交流の実施を求めてゆくしかありません。
こうした方法が全て功を奏しない場合は、親権者変更の審判を家庭裁判所に申し立てることも検討する必要があります。審判例には、親権者の母親が4歳の長男を父親と面会交流させなかったという事案で、父親からの親権者変更(及び子の引渡し)の審判に対し、子の福祉の観点から父親への親権者変更を認めたケースがあり、参考になります(ただし監護権は引き続き母親に帰属し、子の引渡しの請求は棄却)。
親権者が子を虐待していると疑われるときは
親権者が子を虐待していると疑われるときは、直ちに子の住んでいる市町村や児童相談所へ相談・通告して頂くことが必要です。
その上で、非親権者の側としては、親権者変更、親権喪失、親権停止の各審判の申立てをご検討ください。ただし、特に幼い子どもは虐待親を守ろうとして親による虐待の事実を周囲に隠しがちです。事前に客観的証拠(子どものケガの写真、診断書、録音録画、子どもの日記など)を準備することを心掛けてください。
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