不貞行為に基づく慰謝料請求について
不貞行為。昔から夫婦の離婚原因の上位に挙げられ、民法上も数ある離婚原因のうち、いの一番に挙げられているものです(民法770条1項1号)。統計上も、「異性関係」が男性側が離婚調停申立に至った動機の第2位、女性側が離婚調停申立に至った動機の第3位を占めており、我が国における夫婦の主要な離婚原因となっていることがわかります(平成25年度「司法統計」)。
そもそも不貞行為って何?
不貞行為とは、婚姻関係にある一方配偶者が、他方配偶者以外の男女との間で肉体関係を結ぶことをいいます。
ここでは「肉体関係」を結んだという事実が重要で、婚姻外でのプラトニックな恋愛関係や、それ以外でも肉体関係まで至らなかった通常の恋愛関係というものもここでいう不貞行為には含まれません。
不貞行為が認められることの効果とは・・
裁判所に配偶者の不貞行為が認められると、それだけで一つの独立した離婚原因となるほか(民法770条1項1号)、それ自体が他方配偶者に対する不法行為となるので、他方配偶者は不貞行為を行った配偶者に対し、不法行為に基づく慰謝料請求(損害賠償請求の一種)を行うことができます(民法709条)。
なお、この配偶者の不貞行為に基づく慰謝料請求は、それだけを求めて独自に訴えを起こしてもよいし(慰謝料請求訴訟)、あるいは離婚訴訟の中で請求の一つとして慰謝料請求を行ってもよいとされています。より多いのは、後者のように離婚請求と同時に慰謝料請求というケースでしょう。
不貞行為の主張は立証が重要
上で述べたとおり不貞行為すなわち「肉体関係」といえるので、不貞行為に基づいて相手方に慰謝料請求を行うには、相手方が不貞相手との間で不貞行為を行ったことの立証が重要であり、その前提としての証拠集めが極めて重要となります。以下では、代理人として不貞行為に基づく慰謝料請求を行ったり受けたりしてきた数多くの経験の中で、この証拠集めのキモとなる部分を証拠類型ごとにお話してみたいと思います。
メール・LINE・ツイッター・facebookなど
基本的に、他方配偶者と不貞相手とが不貞行為を行っている(あるいは行った)ことを明確に示す記載が証拠として必要になります。「好きだ」「愛してる」などのプラトニックな域を出ないものや、不貞行為の存在をほのめかす程度の記載では不十分といえます。
録音
夫婦の自宅で不貞行為が行われている場合には録音も有効な手段の一つとなります。後できちんと録音時刻がわかるよう、録音者の方であらかじめ録音開始時刻を吹き込むなどの方法が考えられます(意外なことに、録音されたテレビの音などから録音時刻が特定できるということもありますが)。
録音内容は、後で必要に応じて専門業者に依頼しテープ起こしを行います。私の経験上では、「こんな小さな録音で大丈夫だろうか」というものでも専門業者にはかなり対応していただけます。
探偵業者・興信所の調査報告書
不貞行為の証拠の王道といえます。他方配偶者と不貞相手が二人そろっ てホテルやお互いの自宅などから出入りする姿を捉えられれば、不貞行為を証明する力は極めて強力といえます。ただし、(1)費用がかかることや(2)調査期間が限られがちなのが難点です。その他にも、(3)報告書の内容をよく見ると重要な部分で記載が雑、あいまい、もしくはいい加減な部分がある、(4)調査時間に空白部分があるなど相手方に逃げ道を与える恐れがある、などにはよく気を付ける必要があるでしょう。こうした落とし穴を避けるためには、調査報告書を探偵業者などから受け取られたらすぐにその内容を確認し、DVDなどがあれば十分に調査報告書の記載内容と照合し、修正してもらうべき部分や是非加えてもらいたい部分は、早めに探偵業者などに指摘してご相談されるのがよいでしょう。
配偶者の不貞行為に悩み、離婚や慰謝料の請求を真剣に検討していらっしゃる方々は是非参考にしていただければと思います。
以上
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