養育費算定に際しての特別な事情について
前回【養育費の算定方法について】というコラムで一般的な養育費の算定方法についてご説明しましたが、実務上は具体的な養育費の算定にあたってケースごとの特別な事情が養育費の算定に影響を与えることも珍しいことではありません。本コラムでは、このような養育費の算定に影響を与える特別な事情についてご説明したいと思います。
(1)当事者の借金
夫婦が婚姻中に作った借金は、養育費の算定にあたって考慮されることがあるのでしょうか。
この点、借金(債務)の存在は、夫婦の積極財産の財産分与手続きにおいて一緒に処理されるべきものとされ(具体的には積極財産から債務を差し引いたものを分与財産と考え、これを夫婦間で分ける)、原則として養育費の算定にあたって考慮に入れるべきではないと考えられています。
もっとも、養育費の義務者が借金を背負っている場合は現実問題として毎月債務の返済をしてゆかなければならない場合が多く、養育費の支払いと債務の返済が重なることで経済的な窮地に立たされる場合もありうることは否定できません。
そこで、実務上は義務者の借金返済状況を考慮に入れつつ、義務者が毎月確実に支払えるように養育費の金額を調整することも行われています。
この場合、債務の返済が終わり完済に至ったときは、養育費の金額を原則通りの金額へと引き上げるという調整が行われることが多いようです。
(2)医療費
通常の医療費は通常の養育費の中にすべて含まれていると解釈されているので、養育費と別途に通常の医療費を請求することはできません。
一方、子に持病があるなど、特別に医療費がかかる事情がある場合などには、実際に子どもの医療に毎月掛かっている金額を参考に、養育費の金額を引き上げるという場合もあります。
また、子の病気やけがで一時的に多額の医療費が掛かった場合は、権利者が義務者に対してその分担を求めることは可能です。義務者がこれに応じようとしない場合、権利者としては調停手続や審判手続を利用することになります。医療費や学費といった臨時の多額の出費については、その分担について権利者と義務者が誠実に協議することを離婚公正証書や調停で合意することもよく見られることです。
(3)私立学校の学費など
私立学校の学費や習い事、受験の費用などの支出を理由として義務者による養育費の負担を引き上げることはできるでしょうか。
子が私立学校に通っている場合の学費は、当然に養育費の金額引き上げの事情となるものではありません。ただし、子がそもそも私立中学校に通っていて、これから附属の私立高校に進む予定であるとか、そもそも義務者が子の私立学校への進学を既に容認している場合は、養育費引き上げの事情となります。習い事や受験の費用についても、義務者が子が習い事や塾に通うことを既に容認していたなどの事情があれば養育費引き上げの事情として認められやすいといえます。
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