配偶者暴力等(DV)に関する保護命令申立てとは
配偶者暴力等(DV)に関する保護命令申立てについてのご相談をよく頂きます。本コラムでは手続きにつきましてその概要をご説明したいと思います。
申立先
概ね相手方の住所の所在地、申立人の住所又は居所の所在地、または当該申立てに係る配偶者からの暴力・脅迫が行われた地
なお、ケースの緊急性や重大性の程度に配慮し、申立先の裁判所はかなり融通が効くように設定されているようです。ちなみに地方裁判所の管轄となります。
保護命令の内容
- 接近禁止命令
- 退去命令
- 子への接近禁止命令
- 親族等への接近禁止命令
この中でよく申立てしたり申立てされるのは①と③です。特にお子さんの親権や引渡しが問題になっているケースでは、③が必ずといっていいほどついてきます。
なお、①は、いかなる保護命令の申立てにおいても必ず申立内容に含めなければなりません。
罰則
保護命令が下されたにもかかわらずこれに従わず違反者には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。
申立権者
被害者本人のみです。ご親族はどれほど被害者ご本人のことを心配されていても申立権者となりませんので、注意が必要です。
申立の要件
「身体的暴力を振るわれて生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき」です。これまで繰り返し継続的に身体的暴力を受けてきたことを具体的に(日時や具体的な暴力の内容の含め)主張し、診断書や写真などの具体的証拠を添えられることが重要といえます。なお、配偶者暴力等(DV)に関する保護命令申立ての要件は、身体的暴力があることであり、精神的DV(例えば暴言)のみ、経済的DVのみ(生活費を渡さないなど)だけでは申立の要件を満たさないことになりますので、注意が必要です。
その他、配偶者暴力相談支援センター(指定)または警察署(生活安全課等)に事前に相談に行っておく必要があります。公証人の前で宣誓し作成した宣誓供述書でこれに代える方法もあります。
申立後の流れ
申 立
↓ 翌日くらい
申立人審尋(面接)
↓ 相手方呼出(約1週間)
相手方審尋(面接)
↓ 翌日くらい
命令発令もしくは申立却下
割合としては少ないですが、再度の申立人面接や相手方審尋が行われるケースもあります。
申立人側が子を連れて家を飛び出したというケースで十分に具体的な主張や証拠を伴わないまま、とにかく相手方から距離を取りたいという目的で申立がされているのではないかと疑われるケースも散見されます。実際、申立てがなされても申立人が十分な証拠を提出できず、保護命令の発令に至らないケースも散見されます。濫用的な申立のケースがないとはいえないため、裁判所にはこの点の十分慎重な判断をお願いしてゆきたいところです。