不貞行為に及ばない男女の面会が婚姻関係を破綻させる場合があるか
不貞行為に及ばない男女の面会が一方の配偶者との婚姻関係を破綻させたと認定されることはあるのでしょうか。今回はこれを肯定した東京地裁平成25年4月19日判決をご紹介としたいと思います。
事案の概要
夫Xと妻Aは、平成18年に婚姻しました。
男性Yは、平成20年ころに数か月間、妻Aと不貞関係をもち、その後これが夫Xに発覚。夫Xと男性Yとの間では慰謝料80万円を分割し支払う旨の公正証書が作成され、男性Yはこの慰謝料を全額支払いました。
ところが、その後平成23年に妻Aは二度男性Yと面会しました。いずれも時間は深夜、面会場所は銭湯でした。
ちょうどその直後、夫Xと妻Aは妻Aと男性Yの関係などを巡って口論となり夫Aが別居に踏み切りました。その後、平成24年1月に協議離婚が成立しました。
夫Xは、男性Yが平成23年に妻Aと会ったことで婚姻関係を破綻させられ精神的苦痛を被ったとし、男性Yに対する慰謝料請求訴訟を提起しました。
原告夫Xの主張
原告夫Xは、男性Yが妻Aと平成23年に銭湯で会った際に不貞行為を行ったと主張しました。ただし、具体的な不貞行為の存在に関する客観的な証拠はなかったようです。
被告男性Yの主張
被告男性Yは、平成23年に妻Aと会ったのは妻Aが夫Xとの関係に悩んでいたので相談に乗っていただけであると主張、同時にそのころ既に夫Xと妻Aとの婚姻関係は破綻していたと主張しました。
裁判所の判断
裁判所は、男性Yと妻Aの平成23年における二度の深夜の面会において不貞行為があったと認めるに足りる証拠はないものの、このような男性Yの行為は夫Xに妻Aとの不貞行為が再開したのではないかとの疑いを抱かせるに十分であり、夫Xと妻Aとの婚姻関係を破綻に至らせる蓋然性のある行為であると判示しました。
また、平成23年の深夜の面会があった時点において、夫Xは妻Aとまだ同居しており、このころに婚姻関係が破綻していたとは認められないと判示しました。
こうして本判決は男性Yの夫Xに対する不法行為の成立を認めました。
メモ
たとえ不貞行為の存在が認定されなくても夫婦間の平穏を害するような態様での男女の面会が一方の配偶者との婚姻関係を破綻させうるとの認定に道を開いた裁判例であり、参考になります。本件では、①妻Aと男性Yとがかつて不貞関係にあったこと、②妻Aと男性Yが深夜に二人きりで面会していたこと、などの事情が考慮されたといえます。
なお、平成23年の深夜の面会があった時点において、夫Xは妻Aとまだ同居しており、このころに婚姻関係が破綻していたとは認められないとも判示されました。夫婦が同居している最中に既に婚姻関係が破綻しているとはよほど特別な事情がない限り認定されることはないので、妥当な判断といえます。
離婚や男女関係に関するトラブルにつきましては、弊事務所まで早期のご相談をおすすめいたします。
以上