経験事例紹介~きょうだいで監護者が分かれたケース
子どもが複数いてきょうだいの場合、きょうだい不分離の原則から一方の親にきょうだいの監護権が揃って認められやすいというのは一般によく言われることです。弊事務所では、それにもかかわらず審判においてきょうだいで監護者がそれぞれ別の親に指定されたケースも過去にございますので、ご紹介させて頂きます。
事案の概要
父Xと母Yは、平成11年に婚姻し、同年長男、平成13年に長女をもうけました。父Xは、母Yともに会社員です。
母Yはもともと過度の飲酒や浪費に走る傾向があり、お酒のほか洋服などのブランド品の購入や課金ありのソーシャルゲームに走ってしまい、平成21年には父Yからついにこれを咎められたことで夫婦関係が悪化しました。また、母Yは長男からもこうした浪費を咎められたことに腹を立て、酒に酔った状態で長男に対して暴言を吐いたり足を蹴るなどの虐待行為がありました。また、長男はこれが原因で小学校に不登校の傾向を示すようになってしまいました。一方、母Yは長女に対しては暴言や暴力は振るわないものの、その目の前で長男に対して暴言や暴力を振るうことはありました。
ところが母Yはその後も結局夫Xに隠れてこれらの趣味を楽しむことが止められませんでした。翌平成22年には夫Yに再度浪費が発覚したことで夫婦関係が決定的に悪化してしまいました。夫婦げんかともなり、双方が軽いケガを負い警察沙汰にもなってしまいました。 その翌日、母Yは長男と長女を連れていきなり自分の実家に帰ってしまいました。ところが、長男は母Yと一緒に母Yの実家で暮らしたくないと言って母Yを振り切り、結局父Xの迎えで父Yのいる自宅に戻りました。
その後、同平成22年、母Yは、父Xによる長男の監護は違法である、実家で祖父母の協力を得て長男を監護できると主張して監護者指定及び子の引渡しの審判を申し立てました。ここで小職が父Xから相談を受けて受任しました。当方は、母Yには過去の虐待行為があって母Yによる現在の長女の監護は違法であると主張し、長女について監護者指定及び子の引渡しの審判を申し立てました。
結局、審判ではそれぞれのきょうだいの意思、それぞれのきょうだいの監護実績、それぞれのきょうだいと事実上監護している親との関係性等を理由に挙げ、長男は父Xに、長女は母Yに監護権が認められました。結局本件ではそれぞれのきょうだいについて監護状況の現状維持が優先される形となりました。双方即時抗告は行いませんでした。
メモ
きょうだい不分離の原則は家庭裁判所の実務上厳然として存在している大原則であるといえますが、子どもの意思、監護の実績、きょうだいの関係性、親と子の関係次第では、きょうだい間で監護権者が分かれるケースもあることを示した事例です。きょうだい不分離の原則は、母性優位の原則などと比べるとプライオリティがやや落ちるようにも感じられます。
離婚や男女関係に関するトラブルにつきましては、弊事務所まで早期のご相談をおすすめいたします。
以上