事例紹介~婚姻関係の破たんが認められ夫から妻の不貞行為に対する慰謝料請求が否定された事例
通常、婚姻中の一方配偶者の不貞行為は他方配偶者からの不貞行為に基づく慰謝料請求の原因となりますが、ここでは妻に不貞行為があったものの、当該不貞行為があった時点で夫からの妻に対する暴力行為等を原因として婚姻関係が破たんしていた事実が認められ、離婚訴訟における夫から妻に対する慰謝料請求が棄却された事例をご紹介します。
事案の概要
夫と妻は、平成10年に結婚し、二女を設けましたが、結婚当初から夫の妻に対する継続的な暴力行為(殴る、蹴る、髪をつかんで引きずり回す、私物を損壊する)、暴言、モラルハラスメント行為が見られました。なお、夫は娘らに対しても私物を壊す、暴言などの物理的、精神的虐待行為が見られました。夫は家事にも非協力的で、自身の担当と決まっていたはずのゴミ捨てなども機嫌が悪い際はこれを拒否したり、会社員で収入は十分あるはずであるにもかかわらず家計にお金を入れないことも少なくありませんでした。
妻は日記、録音、ケガや壊された私物の写真、診断書などの夫の暴力行為等の証拠の収集を進めていましたが、平成18年には精神科で夫の暴力等を原因とする抑うつ状態との診断を受けることになりました。
平成21年、妻は日中通っていた習い事先の男性講師と不貞関係に陥ってしまい、夫は探偵を使って妻の不貞行為の証拠を入手、夫が妻を追及したことがきかけとなって翌22年に妻が子どもを連れて実家に戻ったことで別居が開始しました。さらに同年、小職が妻の代理人として受任、夫に対して婚姻関係調整調停(離婚調停)を申し立てましたが不成立にて終了しました。
その後、平成23年に小職が妻の訴訟代理人として夫に対して離婚等請求訴訟を提起すると、夫は反訴を提起し、妻に対して不貞行為に基づく慰謝料請求を行いました。
結論は、夫の度重なる妻に対する暴力行為等により、妻の不貞行為時点で夫婦の婚姻関係が破たんしていたことが認定され、婚姻関係破たん後の不貞行為に基づいて妻が慰謝料の支払い義務を負うことはないとして、夫からの慰謝料請求が否定されました。
メモ
通常、婚姻中の一方配偶者の不貞行為は他方配偶者からの不貞行為に基づく慰謝料請求の原因となりますが、ここでご紹介したのは妻に不貞行為があったものの、当該不貞行為があった時点で夫からの妻に対する暴力行為等を原因として婚姻関係が破たんしていた事実を認定し、夫からの妻の不貞行為を原因とする慰謝料請求を棄却した事例です。もっとも、こちらはやや珍しいケースとなりますので、一方配偶者に何か婚姻関係破たん事由(暴力など)があれば他方配偶者の不貞行為が直ちに免責されると考えてしまうのはリスキーでしょう。
また、小職に対するご相談前からご依頼者様(妻)が日記、録音、ケガや壊された私物の写真、診断書などの各種証拠の収集に積極的であったことが功を奏したケースといえます、
離婚や男女関係に関するトラブルにつきましては、弊事務所まで早期のご相談をおすすめいたします。
以上