事例紹介~先に妻側に不貞行為があったケースで、妻から夫の不貞相手に対する慰謝料請求が権利の濫用にあたり認められないとされた事例
通常、婚姻中の一方配偶者の不貞行為は他方配偶者からの不貞行為に基づく慰謝料請求の原因となりますが、ここでは夫に不貞行為があったものの、当該不貞行為の前に妻の方が先に不貞行為を働いており、妻から夫の不貞相手に対する慰謝料請求が信義則に反し、権利濫用に当たり認められないとして棄却された事例をご紹介します。
事案の概要
夫と妻は、平成21年に結婚しました。夫、妻ともに会社員でした。妻はもともとアルコール依存癖がある、浪費癖がある、夫の親族との折り合いがよくないなどの問題を抱えており、結婚当初から夫と妻との間では妻の言動を巡って口論が絶えず、その関係はあまり良くなかったようです。
そうした平成24年、妻が元同級生の男性と数回程度不貞行為に及びました。
夫は、探偵を使って妻の不貞行為の証拠を取得していましたが、妻との婚姻関係を壊したくないとして妻には男性と別れることを求めるのみで、妻や男性に対して慰謝料を請求することはありませんでした。
ところが、平成26年、夫は職場の女性と数回程度不貞行為に及んでしまいました。やはり探偵を使って夫の不貞行為の証拠を握った妻は、夫の職場の女性を相手取り不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟に踏み切りました。原告から被告に対する請求金額は300万円でした。
判決は、妻による不貞行為の存在が先行しているため、妻が夫の不貞行為に基づいて職場の女性に対して慰謝料請求を行うことは信義則に反し、権利濫用として認められないと判断し、原告の請求を棄却しました。
メモ
通常、婚姻中の一方配偶者の不貞行為は他方配偶者からの不貞行為に基づく慰謝料請求の原因となりますが、ここでは夫に不貞行為があったものの、当該不貞行為の前に妻の方が先に不貞行為を働いており、妻から夫の不貞相手に対する慰謝料請求が信義則に反し、権利濫用に当たり認められないとされたケースをご紹介させて頂きました。
本訴訟の中では妻が自身の不貞行為の存在を争っていたため、夫が作成した証拠(探偵による不貞行為の調査報告書)の存在が物を言いました。不貞・離婚の事件では事前の十分な証拠作成が非常に重要であることを想起させられます。
夫が事前の証拠の収集に積極的であったことが功を奏したケースといえます。
離婚や男女関係に関するトラブルにつきましては、弊事務所まで早期のご相談をおすすめいたします。
以上