協議離婚でいったん合意した養育費が相場を上回る場合、事後的に減額することが可能か
離婚協議の現場で、離婚成立後の養育費の金額をめぐって双方当事者に争いが生じることは決して珍しいことではありません。
このような場合、離婚原因を作ってしまったことについて負い目を感じている配偶者は、多少相場を上回る金額でも穏便な協議離婚を実現するという観点から相場を上回る金額での養育費支払いに合意してしまう場合があります。
また、そうでなくても協議離婚の早期成立を優先させるという観点から養育費で妥協し、相場を上回る金額での養育費支払いに合意してしまうというケースがあります。
このように相場より高めの養育費の金額提示を行うことで早期の離婚合意を相手方配偶者から引き出しておき、離婚成立後改めて相手方に対して養育費減額調停や審判を起こした場合、家事調停や家事審判で現行の養育費が相場より高いものであるとして養育費の金額の減額が認められるものでしょうか?
養育費減額調停や審判が認められる場合とは一体どのような場合なのかが、問題となります。
そして、先ほどの疑問に対する回答としては、ほぼ「NO」となります。このような経緯で養育費減額調停や審判の手続きを利用しても、養育費の金額の減額に成功する見込みは極めて薄いといわざるをえません。
そもそも婚姻費用や養育費の変更は、当初婚姻費用・養育費が決まったときの状況と比較して父母や子どもの収入・経済・身分状況に目ぼしい変化(たとえば①父母の収入の大きな増減、②子どもの突然の病気などで支出が突如増えた場合、③父母の結婚などの身分変動のケース)が生じないと、そうそう認められるものではない、というのが実務上の取り扱いです。
また、これもありがちなのですが、最初に相場より高めの養育費の金額で合意してしまうと、たとえ前述のような事情の変更が生じたとしても、相場どおりの養育費への減額が認められることは実は望み薄といわざるをえないのです。わざわざ最初に相場より高めの養育費の金額で合意するということは、それだけ子どもを成人まで手厚く養育する意思を対外的に表明し合意したものと家庭裁判所に解釈されてしまうことが避けがたいのです。
もし、ご自身のケースで婚姻費用・養育費の変更が認められる見込みがあるのか、いくらくらい変更される見込みがあるのかお知りになりたいという方がいらっしゃれば、弊事務所までお気軽にご相談くださるようおすすめいたします。