離婚事件における調停「前置」とは?
ご本人同士の離婚協議がうまくいかない、、感情的なもつれ、希望する離婚条件に当事者間で開きがある、そもそも一方が離婚やお子さんの親権を渡すことを拒んでいるなど、当事者同士の離婚協議がうまくいかない事情も千差万別です。
このような場合、家庭裁判所に調停を申し立てるべきか、それともいきなり離婚訴訟を提起してよいものか、、一般の方はきっと迷われると思います。
このようなときの法的な手続きの選択について、「家事事件手続法」という法律は、まず家庭裁判所に対する離婚調停の申立てを先行させることとしています(これを「調停前置主義」といいます)。つまり、早期に離婚に決着を付けたい事情があるからと言っていきなり家庭裁判所に離婚訴訟を提起することはできないということになります。
ではこの離婚調停(家庭裁判所では手続き上「夫婦関係調整調停」と呼ばれます)でも協議がうまくゆかずに調停が成立せず、調停が不成立で終了した場合はどうなるのでしょうか?
この場合、離婚当事者の双方はようやく家庭裁判所に離婚訴訟を提起することができます。調停が「前置」されたことになるからです。
では、調停を申し立てた当事者が調停不成立になる前に調停を取り下げた場合は、この調停「前置」の条件を満たすのでしょうか?
この点は、調停の第1回期日も始まらないうちに調停を取り下げては調停「前置」の条件を満たしてはいないと考えられますが、調停で争点が明らかとなり双方当事者の歩み寄りが困難な程度まで進行していれば、もはや調停「前置」の条件を満たすものと考えられます。
次に、離婚訴訟に「前置」される調停としては、離婚訴訟提起の何年前のものまでが有効なのでしょうか?
この点明確な裁判例は確認できませんが、おそらく調停終了から1年以上も経過して提起された離婚訴訟は、調停「前置」の要件を備えていないと家庭裁判所に指摘され、訴訟提起が認められないおそれがあります。調停から1年も経過すれば、夫婦間の事情や問題となる争点も様変わりしている可能性があるからです。
ご自身のケースで離婚調停の申し立てや離婚訴訟の提起をお考えの方は、お気軽に弊事務所までご相談くださるようおすすめいたします。