婚姻費用や養育費の算定における事業所得者の収入の認定。一体どのようにして行うのか?
給与所得者と比べて正確な所得の把握が難しい事業所得者
婚姻費用金額や養育費金額の算定にあたって給与所得者については給与明細や源泉徴収票で比較的容易に収入額を認定することができますが、事業所得者については給与所得者ほど正確な所得の把握は簡単ではありません。ですが事業所得者である配偶者と離婚することになれば、婚姻費用や養育費の算定に当たってその収入額を正確に把握することが当然必要となります。今回は、この事業所得者の総収入額の認定のしかたについて見ていきたいと思います。
原則は「課税される所得金額」から認定
事業所得者の課税所得を認定する場合、原則としては確定申告書中における「課税される所得金額」から認定します。
この「課税される所得金額」は、通常売上額から経費額を控除した利益額のことをいいます。
ただし、この「課税される所得金額」を計算する場合には、様々な控除金額(たとえば、雑損控除、寡婦・寡夫控除、勤労学生・障害者控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除、青色申告特別控除、医療費控除、生命保険料控除、損害保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、寄付金控除等)が差し引かれているところ、事業所得者の総収入額の算定にあたっては通常これらの控除金額を加算して算出します。
また、経費の水増しが見られる場合には、当該経費額を「課税される所得金額」に加算して総収入額を算出します。ただし、経費に水増し部分があるかどうか、そしてその範囲は調停・審判手続きにおいて双方当事者間でよく争いの生じる部分です。
税務申告上の金額が現実的な経済状態と大きく異なる場合
税務申告上の金額が現実的な経済状態と大きく異なる場合に、残っている資料が乏しく、あるいは一方当事者がデータや資料の開示に消極的であると、裁判所が的確な事業所得者の収入額を認定できない場合があります。
このような場合は、事業所得者の実際の暮らしぶり、支出状況などから総収入額を推認し、あるいは同性・同年代の賃金センサス(賃金の平均額のデータ)から事業所得者の収入額を推認するということが行われることもあります。
いずれにしても、事業所得者が裁判所からの求めに対しても総収入額の算定に必要なデータまたは資料の提出を出し渋ると、当該事業所得者にとって不利な形で婚姻費用金額もしくは養育費金額の認定がなされる可能性が高まるといえます。
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