遺言執行、遺言執行者とは①
遺言書で遺言執行者が指定されていることが少なくありません。遺言執行や遺言執行者とは何でしょうか。本稿では遺言執行と遺言執行者についてご説明したいと思います。
遺言執行について
遺言執行とは、遺言の内容を実現する手続きのことをいいます。遺言で遺言執行者が指定されていない場合は、相続人や受遺者が遺言の内容を実現する手続きを行うことになりますが、遺言で遺言執行者が指定されている場合、原則として遺言執行者がその任に当たります。
遺言執行者の資格について
遺言執行者に法的な資格要件などは特にありません。遺言者の配偶者や子などの相続人の中から選任することもできますし(ただし、民法上未成年者や被成年後見人は遺言執行者に就任することができず、欠格事由とされています)、われわれ弁護士などの専門家を指定して頂くことも可能です。
遺言執行者がその業務を怠るなどの正当事由が認められるのであれば、利害関係人(相続人、受遺者など)は、家庭裁判所に遺言執行者の解任を請求することもできます。
遺言執行者の職務内容
遺言執行者は、遺言執行業務にあたって善管注意義務を負うなど、民法上の委任の規定が多く準用されます。
また、平成30年の民法改正前までは遺言執行者は業務執行上相続人の利益に配慮すべき義務があるか否かについて議論もありましたが、同年の改正において遺言執行者の職務内容が「遺言の内容を実現する」ことにあると明記されましたので、遺言執行者は相続人の利益に反しても遺言者の遺言内容を実現に移すのがその職務内容であることが明確となりました。
弁護士の遺言執行者は利害相反を常に気に掛けている
弁護士が遺言執行者に選任されている場合、当該弁護士が一部の相続人や推定相続人(相続発生前に将来相続人になると見込まれる方のこと)の代理人に就任することを躊躇するのが通常です。一部の相続人や推定相続人の代理人に就任してしまうと、他の相続人や受遺者との間で利害対立が発生し、中立公正な立場での遺言執行業務の実施が期待できなくなってしまうからです。
遺言執行者がいない場合、いなくなってしまった場合は
遺言執行者がないとき又はなくなったときは、利害関係人(相続人、受遺者など)が家庭裁判所に遺言執行者の選任を請求することができます。この手続きは、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。
この「遺言執行者がいない場合、いなくなってしまった場合」とは、そもそも遺言で遺言執行者が指定されていない場合のほか、遺言執行者が死亡した場合、就任拒絶、辞任や解任の場合などが含まれます。
次回のコラムでは、遺言執行者の具体的な職務内容などを見てゆきたいと思います。
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