遺産分割調停における段階的進行モデルとは
遺産分割調停では、①相続人の範囲の確定、②遺産の範囲の確定、③遺産の評価の確定、④特別受益、寄与分の確定、⑤遺産の分割方法の確定といった何種類にもわたる複雑な作業が必要とされますが、以前の遺産分割調停実務では、これらを当事者が行きつ戻りつ主張することが特に問題なく許されておりましたので、争点がいつまで経っても確定しない、あるいは蒸し返されるということが繰り返され、遺産分割調停の長期化の原因となっていました。
段階的進行モデルの全国的採用へ
こうした事態に対応するため、東京家庭裁判所では平成末期になって遺産分割調停の段階的進行モデルが採用されるようになり、後にこの運用が全国の家庭裁判所に拡大されることになりました。
段階的進行モデルのポイント
この遺産分割調停の段階的進行モデルですが、整理するとポイントは次の2点にまとめることができます。
- 遺産分割調停を基本的に①相続人の範囲の確定→②遺産の範囲の確定→③遺産の評価の確定→④特別受益、寄与分の確定→⑤遺産の分割方法の確定の各順序に沿って進行すること。
- 遺産分割調停が次の段階に進むと、前の段階には原則として戻ることができないこと。
段階的進行モデルの各段階について
遺産分割は丸いケーキの配分によくたとえられます。このケーキのたとえで言えば、
- 相続人の範囲の特定→ケーキを食べることができるのはだれかを決める
- 遺産の範囲の確定→ケーキの大きさや種類を決める
- 遺産の評価の確定→ケーキ以外にお金をもらえる人もいるので、全体で公平になるよう食べるケーキの値決めをする
- 特別受益、寄与度の確定→先に別のケーキを食べた人は取り分を減らし、ケーキ作りを手伝った人には取り分を増やす
- 遺産の分割方法の確定→実際にケーキを取り分ける
このような感じになるでしょうか。このようなやりとりの順番が前後していては、ケーキを切り分ける方ももらう方も混乱して収拾がつかなくなってしまう、ということで、段階的進行モデルの採用に至ったというわけです。
段階的進行モデルの具体例
段階的進行モデルでは、たとえば②遺産の範囲の確定が行われた際は、当事者間の合意内容を「中間調書」というものに記録し、全当事者が以後遺産の範囲を原則として争うことが出来ないように配慮しています。
また、③遺産の評価の確定においては、不動産を家庭裁判所の任命する不動産鑑定士による不動産鑑定に付す際には、事前に全当事者から不動産鑑定士の鑑定結果については事後争わない旨の同意書が取り付けられたりします。
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