遺言書保管制度について②

前回は遺言書保管法が創設された趣旨について見てまいりましたが、今回からは、遺言書保管制度の具体的な利用方法について見ていきたいと思います。

遺言書保管の申請はどの法務局で受け付けてもらえますか?

遺言書の保管は全国に312カ所ある遺言書保管所(概ね全国の法務局本局と支局に対応)であればどちらでも受け付けてもらえるのでしょうか?

答えはNo

遺言書の保管の申請は、遺言者の住所地もしくは本籍地または遺言者の所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対して行わなければなりません。住所地や本籍地に管轄が認められるのはよくわかりますが、不動産の所在地にも管轄が認められるというのは、不動産相続登記を促すという遺言書保管法の趣旨がよく現れているといえますね。

また、既に他の遺言書が遺言書保管所に保管されている場合は、遺言書の保管の申請は、当該他の遺言書が保管されている遺言保管所に行わなければなりません。これは相続人や遺言書保管所の混乱を避けるためですね。

遺言書保管官には遺言の要否や遺言書の内容を相談できますか?

公正証書遺言においては、公証役場にいる公証人に遺言が必要かどうかや遺言の内容について相談ができます。では、自筆証書遺言を作成する際、遺言書保管所(法務局)にいる遺言書保管官に対して遺言の要否や遺言書の内容を相談することはできるのでしょうか?

答えはNo

遺言書保管官は、遺言者が既に作成した遺言書について、民法に定める自筆証書遺言の方式を充足しているかどうかについて外形的に確認することとされております。したがって、遺言者が遺言書を作成する際に、遺言の要否や遺言書の内容をどうするかについて相談を受けたりするなど、遺言書の作成自体に関与することは遺言書保管官の職務として想定されていないのです。ですから、遺言書保管官は遺言者からのそのような相談に乗ってはならないと考えるべきでしょう。ここは遺言保管官と公証人との大きな違いの一つですね。

このような次第ですから、間違っても遺言書の内容をどうするかについて法務局に出向いて遺言書保管官にご相談しようとはなさらないようにお願い致します。

次回のコラムでも遺言書保管制度の利用方法について引き続き見て行きたいと思います。

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以上

コラム:相続・遺言

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