複数の相続人で賃借不動産を相続。どう分割すればよいか
相続実務においては、相続人が被相続人の賃借していた不動産を相続するケースが多くあります。このような場合に相続人が複数いたとすると相続した賃借不動産をどう分割すればよいでしょうか。ここでは、被相続人の所有する建物と借地権をAとBの二人の相続人が相続したケースで考えてみたいと思います。
借地権はどうなるか
借地権を複数の相続人で相続した場合、借地権を相続人間で準共有することになります。共有する権利が所有権ではないため、「準」というフレーズが頭につきますが、実態としては借地権を相続人間で共有しているのだという理解で構いません。
遺産分割に先行して共有物分割請求はできるか
それではこのAとBとで準共有している借地権について、通常の遺産分割に先行して民法上の共有物分割請求(の訴訟)を行うことは可能でしょうか。
ところが、最高裁判所は判例でこれを否定しています。
理由としては、共有物分割請求の訴訟では寄与分や特別受益に関する審理・判断を行うことができないため、相続人間の公平を図れないということを挙げています。妥当な判断といえるでしょう。
そこで、A、Bとしてはやはり準共有している借地権の処理についても通常の遺産分割手続で解決を図ることになります。
借地権についての遺産分割の方法
借地権についての遺産分割の方法については、主に下記の5つの方法を挙げることができます。
地主の承諾の要否について
以上のような処理について地主Xの承諾が必要かどうかが問題となります。
- 借地人名義を相続手続に伴い変更することについての地主の承諾の要否
- 借地権を売却することについての地主の承諾の要否
1.については地主の承諾は不要です。
2.については地主の承諾が必要ですが、第三者が借地権を取得しても地主に不利がないにもかかわらず地主が承諾しないときは、裁判所は借地権者の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができます。
①~⑤のうちベストな選択がどれなのかは、建物や土地の状況、地主に支払うべき譲渡承諾料の金額・原資の見込み、発生する譲渡所得税の金額・原資の見込みなどで事案に応じ千差万別と言えます。
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